ノンチルフィルタ―ド製法
チルフィルタリングとは?
“チルフィルタリング”の工程はウイスキー業界全体に広がっており、現在では蒸留所の大半が、瓶詰めの前にウイスキーから好ましくない成分を取り除くためにこの工程を導入しています。
チルフィルタリングを利用する理由は、主に見た目の問題です。 アルコール度数45%以下のウイスキーはチルフィルタリングが施されておらず、氷を入れたり冷やしたりすると白濁します。 この自然現象は、お客様や生産者にとって好ましくないものとして考えられています。そこで蒸留所では、瓶詰め前にチルフィルタリングという工程を行い、ウイスキーに自然に発生するこうした粒子を取り除くことで対応してきました。 一方、アルコール度数が高く46%以上のウイスキーには白濁が生じないので、問題ありません。
なぜ白濁が生じるのか?
この白濁は、ウイスキーのなかに天然脂肪酸、エステル、タンパク質が存在していることが原因で生じます。 蒸留工程では必ず発生し、長期間にわたる熟成時には木樽で生じる場合もあります。 ウイスキーが冷却されると、自然に発生した脂肪酸とタンパク質、エステルが塊になり、“ウイスキーヘイズ”と呼ばれる白濁の原因になります。
チルフィルタリングしていないウイスキーは、温度の低い場所で貯蔵されていると、時間の経過と共にボトルの底に澱が溜まります。 残念ながら、澱も白濁もウイスキー愛好者の間では好ましくないものとして受け止められています。 20世紀初頭、この「ウイスキーヘイズ」という欠陥は、瓶詰めの前に低温のウイスキーを濾過して白濁を取り除くことでが解決できることが分かりました。 その結果、ウイスキーの熟成で自然に生じた成分は冷却濾過の工程で簡単に取り除けるようになったのです。
チルフィルタリング工程
チルフィルタリングの工程では、ウイスキーの温度をシングルモルトの場合は0℃まで、ブレンデッドウイスキーの場合は-4℃まで下げる必要があります。 ブレンデッドウイスキーの方が冷却温度が低いのは、ブレンデッドウイスキーにはグレーンウイスキーが含まれており、脂肪酸が自然に凝縮する温度が低くなるためです。 冷却してから、高圧をかけて、非常に目の詰まった金属のメッシュをいくつも通して濾過します。
濾過された澱の量は、金属フィルターの数、圧力のレベル、水流の速さによって変わります。 ウイスキーがチルフィルタリング装置を通過する速度が遅くなれば、フィルターに残る澱の量は増えます。 この工程で、ウイスキーに他の沈殿物や“炭”が混ざっていることが分かれば、それも取り除きます。
善か悪か?
ハイドでは、シングルモルトに関しては一切チルフィルタリングを行っておりません。 私たちは、樽の個性や長い時間におよぶ熟成の工程によって得られる特徴や味わいすべてをそのまま守りながら、自然なウイスキーを造り上げることを善しと考えています。 自然に発生した脂肪酸やエステル、タンパク質を原酒のシングルモルトウイスキーからすべて取り除くと、最終的な香味やそのウイスキーの個性に影響を与えてしまいます。 本物のウイスキーの目利きは違いが分かるはず――私たちはそう信じています。